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美術品保存修復の世界では、生半可な知識はかえって害になることもある。

僧侶たちを徹底的に指導すべきか、それともこのまま放っておくか?

 

すべての始まりは『ブータンの聖なる美術:ドラゴンの贈物』展でした。この展覧会は世界を巡回し、ブータンの知られざる仏教美術だけでなく、このユニークなヒマラヤの仏教国における文化保存についても、光を当てることになりました。

2005年から、私は毎年2ヶ月をブータンで過ごし、どのようにして傷んだ古いタンカを修復・保存していくか、僧侶たちのグループと専門的な技術を分かち合ってきました。またホノルル美術館へ彼らを連れていき、一人ひとり訓練を受け、西洋の技術者とともに仕事をすることで、技法とともに美術品保存修復の重要性を学び、広い視野を手に入れてもらうことができました。

 

あの日々以来、僧侶たちはタンカを縁取る古い絹織物を縫い、補修することを学びました。絹がひどく傷んでしまって使えないときには、草木染めによって新しい絹を元の古い絹のように見せることも覚えました。また、タンカの洗いは非常に繊細な作業です。長い訓練の間に、洗いすぎないタイミング、元の絵が持つ味や趣きを失わないようにすることも学びました。タンカにたくさんの裂け目がある場合には、非常に薄い絹で裏打ちする方法も知っています。傷つき欠損した箇所の補彩も決して簡単ではありませんが、僧侶たちは真新しい絵に見えないよう、どこで止めるかも判断できるようになりました。

 

私の目標は、第一世代の僧侶修復師たちを育成するだけではなく、後につづく世代に継承できる、修復技術の伝統をつくりだすことにあります。聖なる宗教画を、いったい僧侶以外の誰によりよい修復ができるでしょう。

 

2011年4月、私はブータン王国政府から僧侶たちのための最初の保存修復センターを建設する土地を与えられました。このセンターは王国内のすべての寺院の破損したタンカを修復することに力をつくします。首都ティンプーでは僧侶の住居が不足しているのですが、修復師の僧侶たちはここに住むことができ、また次世代の僧侶たちを指導する施設として機能することになります。

 

2005年の夏から2011年11月までの間に、ティンプーの小さな建物のワンフロアを使って行われた保存修復技術のワークショップで、127点の非常に貴重なタンカが修復されました。その中の65点が『ドラゴンの贈物』展で展示されました。

 

しかしながら、もしこの保存修復センターのための資金が確保できない場合、僧侶たちの入念な作業も、ブータン王国の神聖な芸術を保存するために払われた多くの犠牲も失われることになります。そして訓練を受けた僧侶たちはそれぞれの地方に戻り、違う職務に着くことになるでしょう。

 

保存修復はブータン王国では新しい概念です。一つ屋根の下に集った修復師の僧侶たちは、聖なる仏教美術を学び、讃えるための名所を創りあげるのです。彼らはここで、ブータンの未来の世代のためにタンカの取り扱い方、保管の方法、そして保存してゆくことを学びます。そしてまた外国からの訪問者の方々には、仏教美術へのより深い理解と認識を得ていただくことができるでしょう。我々は、このすばらしい過去からの遺産の運命をしっかりと確かなものとし、そしてそれを現在に生き続けさせることができるのです。

 

タシ・デレク、

エフライム・エディ・ホゼ

 

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